不動産などを平穏かつ公然に他人のものを所有の意思を持って20年持ち続けると占有の事項が成立し占有者のものになるという決まりがあります。
このようなものとして取得した不動産が相続財産だった場合、かなりややこしくなります。今回者占有が事項となり、占有者が死亡した場合の相続について解説します。
ケース事例
川口市に住む相続人Aさんは、父Xの相続の件で依頼がございました。父Xは登記簿謄本上持分1/2を所有するYとの共有名義であった土地に家を建て、それ以降亡くなるまで35年間自宅として使用し建物及び土地の全てを利用し占有しておりました。また市役所から来る固定資産税の支払いも全て父Xが行なっておりました。
このケースの場合占有の条件に当てはまりますが、生前時効を持って援用(権利の主張)をせずに亡くなってしまいました。
このような場合XからAへの相続はどのように行われるべきなのでしょうか?またどのような手続きが必要になるのでしょうか?
大まかな流れ
時効援用権者(原告)から登記名義人(被告)への訴状送達をもって時効援用の意思表示となります。そのためにはまず正確に訴訟当事者となる相続人を特定する必要があります。なお登記名義人が死亡している場合はその相続人全員に対して行う必要があります。
確定判決の内容には時効による所有権移転の原因日付となる起算点、登記権利者、登記義務者の記述が必要でありそこも明確にする必要があります。
当事者に相続が発生している場合、通常登記記録の名義人の表示をもとに戸籍などの相続証明情報から相続人を調べますが、時効完成までのかなり長い時間の経過により複数の数次相続または代襲相続が生じて訴訟当事者が増え複雑化する可能性があります。
また推定相続人の中に相続放棄をしたものがいた場合、その人は当事者ではなくなります。万が一訴状送達後に相続人でないことが分かった場合はその者を被告から除外する必要があります。この場合請求の趣旨も変わるため訴状の変更手続きを行う必要があります。
相続放棄をした者、異議を唱えるものがいた場合占有要件の確認、連絡が取れない人、行方不明者などイレギュラーな人がいる場合しっかり事前に把握した上で、訴訟当事者を特定して有効に送達する必要があります。
実際に書類を作成する上では、判決文や理由中の記載を持って相続証明情報とはならず、戸籍や遺産分割協議書等を添付情報とし、相続関係と権利の承継を証明する必要がございます。なお相続人は時効の援用権は承継するものの自動的に登記権利者となるわけではないことに注意が必要です。いずれにせよ時効により土地を取得した場合は生前に登記情報の変更を行っておくことが何よりも重要となります。